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酒さ

1)酒さの「皮膚」内で起こっていること

ちょっと難しいことを書きますね。酒さの方のお肌では、自然免疫受容体TLR2の発現亢進が起きていることがわかっています。もともと皮膚は外部のさまざまなものに対するバリア機能をもち、自然免疫といって、自分以外のものを排除する働きをもちますが、この働きが亢進しているので、外的なものに対する感受性が高まってしまいます。ですので、普段大丈夫であったお化粧品が合わなくなったり、ひどくなるとご自分の髪の毛や水、風があたるだけでもヒリヒリ痛いということにもなりえます。
また、自然免疫が亢進することで、皮膚にカテシリジン(LL-37)という抗菌ペプチドが過剰にでてきてしまい、毛細血管拡張や、炎症、赤みが強くなってきます。

2)酒さの「引き金」になること

(1) 酒さの引き金になる外的なもの

寒暖差、日光、刺激物、ニキビダニのような微生物などがありますが、一件刺激と思わないようなもの、化粧品(特にピーリング的な効果のあるもの、ビタミンA含有化粧品など)の連続使用、化粧品自体は刺激が少なくてもその方には合わない化粧品の連続使用、医療薬(昨今のにきび治療薬は非常に進歩しましたが、その分刺激の強いものも多いです。または後述いたしますステロイド外用剤の連続使用は皮膚の菲薄化、毛細血管拡張を著明に起こします)、エステ、美容医療によりご自分の皮膚の耐えられる以上の刺激が加わった場合も、酒さ様皮膚炎を生じて参ります。

(2) 酒さの引き金になる内的なもの

A) 大きなものとしてホルモンバランスの乱れ(更年期に生じやすいのはこのせいです、生理不順などおありの方もここに入ります)
B) 血のめぐりの悪さ(下半身が冷え、上半身が熱いというようなタイプの方、人はストレスでもこのような状態となります)
C) 食生活のアンバランス(甘いもの、脂っこいもの、乳製品過多、香辛料、辛い物をよく食べられる方など。最近は小麦粉製品も控えていただいております)
D) もともと皮膚が白く、薄く、敏感な方
E) ストレス過多で、自律神経が乱れ、交感神経過剰の方(小さいころ、人前で発表すると顔が赤くなる・・というような経験は誰しもあるのですが、この状態が発表時でなくても持続してしまうと考えるとわかりやすいかと思います)

 「私はどうしてこんな肌になってしまったんでしょう?」というご質問を毎日いただきます。それは、本当に人それぞれ違うのですが、間違いなく言えることは、上記(1)のどれかと、(2)のどれか(多くは複数)が重なり合って生じます。内的要因だけで、そこに外的なものが加わらないと、もしかしたら一生、発症せずに済んだかもしれません。複数の引き金が重なり合って、ついには「お肌」が我慢しきれないようになって発症いたします。
 実際の診察では、排除すべき外的なものをやめてもらい(私が診察でいつも「小学校二年生のときのお肌の手入れに戻してください」というのはそのためです)、内的なもののうちどれを改善すべきか判断し、治療方針をたてているのです。

3)酒さとステロイド

最近はみなさん、健康志向の方が増えておられますから、昔のように「酒を毎日浴びるように飲んでおられる」ような、酒さの名前通りの患者様はほとんどお見掛けいたしません。ほとんどの方が、健康や美容に気を遣うあまり、過剰な刺激を肌に加えてしまった方です。
 ステロイド剤は、素晴らしい薬で、体の内部、外部の炎症を非常に早期に抑えてくれます。病気の中には、炎症の火をなかなか鎮静化しがたい慢性炎症性疾患が多くあり、このステロイドが必要な方、継続使用が必要な方はおられます。しかし、ほんの一時、何かで炎症を起こされ、その刺激となる原因を取り除けば、「からだが自然に治していく」ことのできる状態で、ステロイドをやみくもに長期にわたってご使用になりますと、依存状態を生じます。皮膚は菲薄化を起こし、かえって赤みを増し、毛細血管は拡張してまいります。皮膚は「自分で治していく力」を弱めてしまっています。
これも私がよくたとえで言います。「小学生の子供の宿題を全部親がやっていたら、当座いい成績はとれるでしょう。でもずっと手伝っていたら、もう子供は自分で勉強しません」と。依存状態になっている皮膚から、ステロイドを取り上げると、一時的にリバウンド症状を起こすので、それが怖くてなかなかやめられない方もおられます。しかし、「いつやめるの?今でしょ」というギリギリの状態ではありますので、サポートいたしますので、ステロイド依存の方はご相談ください。
 あと、私がこう書くと、「ステロイド依存性酒さ様皮膚炎」以外のお病気の、顔に赤み、炎症がおありの方も「私もステロイドをやめたい!ステロイドは怖い!」という風に思われる方もおられるのですが、ステロイドが本当に必要な疾患はございます。またそういう方は、自分の炎症に合ったステロイドの濃度、使用量をされていると、さほど副作用は起こさないことが多いです。思い込みをなさらず、ご相談くださればと存じます。

4)薄くなった皮膚

 西洋医学は、高熱を下げたり、強い炎症(赤みや痛み)を抑えることは得意ですが、逆に冷え性を治したり、不可逆性(もう元には戻らない)といったん診断したものには無力なことが多いです。ですので、薄いクリアフォルダーのようになってしまい、肌のバリアとしての役目をなさなくなった状態や、毛細血管が渋滞する道路の脇道のようにニョキニョキと増えたり、拡張してしまった状態をみて、「もう、これは治りません」と医師に言われてしまうことがあります。しかし、私はそう考えません。これを改善するありとあらゆる手立てを講じております。ただ、「薄くなった皮膚」を改善させるには、これ以上外部からの刺激を加えず一定期間待つ必要がございます。

5)様々な治療法

(1) 漢方薬

私は皮膚にこもる熱、赤みを落とすための清熱剤とよばれるものと、血のめぐりを改善させるものを併用して服用していただくようにご指導することがほとんどです。後述いたしますが、私自身で、漢方薬を使用した実験や、患者様に服用していただいてのデータを出しておりますので、これなしには根本解決は難しいと思います。

(2) 外用薬

様々な外用薬を用意しておりますが、現在他医などから「酒さ」用として処方される外用薬は、すべて酒さの中でもニキビ状になった丘疹(ぶつっとしたもの)に効果があるもので、頑張って顔の赤みや毛細血管拡張部にいくら塗られても、改善しないばかりか、軟膏の刺激で逆に悪化することもあります。現在のご自分の状態のどこに何を塗るか、または塗らないかをきちんと説明を聞かれたうえでご使用ください。

(3) Vビーム、ポテンザなど

赤み(血液中のヘモグロビン)に特化して吸収され、毛細血管拡張に対して一番効果が高いのがVビームです。ほかにも「赤み」に効くとされているレーザー類はございますが、それは「赤み」にも効くという意味で、「赤み専用レーザー」ではございません。今後も、一日でも早い酒さの改善のため、レーザーの研究、導入はしてまいりますが、Vビーム施術を入れて参りますと、少しでも早い結果が得られます。

(4) ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養上清液

これにはエクソソームといわれる組織の修復力を高め、組織の炎症を鎮める効果のあるものが非常に多く含有されております。また血管へも働きかけるので、毛細血管拡張にも効果がでてきております。臨床ではよい結果を出しており、現在私自身大学で研究もしている分野となります。

(5) ACRS療法

これはご自身からいただいた血液の中にある抗炎症成分のみを増やして、お体に戻すという方法です。これにより、抗炎症サイトカイン(炎症を治める体内物質)を通常の数倍に増幅させて、患部に注入することができます。

6) ずっと続く研究

 私から意識して「酒さ」「酒さ様皮膚炎」の研究を開始したり、専門的に治療をしようとか、では最初なかったのです。が、自分なりに「酒さ」の患者さんの皮膚や、体の中で何が起こっているのだろうと考え、アドバイスしているうちに、全国から多くの「酒さ」「酒さ様皮膚炎」「顔の赤み」で悩まれる方がお越しになるようになり、なんとか期待にお応えしたいと思いましたし、その治療法の科学的な裏付けを研究するようになりました。

「酒さモデルマウスに対する桂枝茯苓丸加ヨクイニンの影響」

これはBPBジャーナルに掲載されました。
漢方薬により、血管拡張が改善、また皮膚の菲薄化、ダメージの回復が早く起こることがわかりました。

「ステロイドにより誘発した酒さ様皮膚炎マウスにおける漢方薬、清熱剤、駆お血剤の効能」

これはTraditional Kampo and Medicineに掲載されました。私の医学博士取得の博士号論文でもあります。ここでは、漢方のシナジー効果がわかりました。

「酒さに対する十味敗毒湯と駆お血剤の併用療法」

これは、実際に多くの当院の患者様にご協力いただき、その効果を示したものです。
上記漢方薬単独、またはレーザーとの併用にて、効果を出したものです。

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